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カサブランカ

コメント:弘兼憲史  
カサブランカ

「君の瞳に乾杯」――。
「昨日? そんな昔のことは覚えてない。今夜? そんな先のことはわからない」――といったハンフリー・ボガートの台詞があまりにも有名な、アメリカ映画の傑作です。1943年のアカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞を受賞しました。

『カサブランカ』が製作された1942年という年は、日本軍の真珠湾攻撃を受けたアメリカが、第二次世界大戦に突入した翌年。その最中にこんな恋愛映画を製作していたのですから、今更ながら日本は負けて当然だったと思ってしまいますね。

もっとも、まったく戦争と無関係というわけではなく、この作品の随所には、当時のフランスを占領していたナチス・ドイツに対する批判や皮肉が散りばめられています。たとえばラストシーン近くでは、警察署長がまだ残っているミネラルウォーターのボトルを、ゴミ箱にポイと捨ててしまいます。そのラベルに書かれていたVICHY(ヴィシー)とは、当時、ドイツの傀儡政権だと批判されていたフランス政府の首都があった地名なのです。また、名曲『As time goes by』とともに、フランス国歌『ラ・マルセイエズ』が印象的に使われています。

最後に余談になりますが、「ボギー」という愛称で今や伝説化しているハンフリー・ボガートは、戦前のアメリカで人気を博した日本人俳優、早川雪洲に憧れて役者を目指したといわれています。

シャレード

コメント:弘兼憲史  
シャレード

1953年の『ローマの休日』でハリウッド・デビューし、アカデミー賞主演女優賞を獲得。その可憐さで「世紀の妖精」「世界の恋人」呼ばれたオードリー・ヘプバーン主演のロマンチック・サスペンスです。1963年の作品ですから、当時のオードリーは34歳ということになりますが、その年齢を感じさせない清楚な美しさこそ、「妖精」と称される所以なのでしょう。 ファースト・シーンは、猛スピードで走り去る列車から転がり出る死体。続いて、サスペンス・タッチのオープニング・グラフィック。バックに流れる印象的な音楽は、『酒とバラの日々』『ティファニーで朝食を』『ピンクの豹』などで知られるヘンリー・マンシーニの作品です。

『シャレード』はこうして、スパイ映画のように張り詰めた緊張感ではじまるのですが、いつの間にかそこにロマンスやコミカルな要素が加えられていく。名作ミュージカル『雨に唄えば』などを手がけたスタンリー・ドーネン監督による、洒落たセンスが光ります。

オードリーの相手役は、ハリウッドを代表する二枚目俳優、ケイリー・グラント。そこに『荒野の七人』『大脱走』のジェームズ・コバーン、『恋人よ帰れ!わが胸に』『おかしな二人』のウォルター・マッソー、『暴力脱獄』『大空港』のジョージ・ケネディらが絡んでストーリーを盛り上げています。

駅馬車

コメント:弘兼憲史  
駅馬車
 

西部劇史上、というより映画史上に輝く娯楽大作です。監督は、『男の敵』『怒りの葡萄』などで4度のアカデミー監督賞に輝く巨匠中の巨匠、ジョン・フォード。主演は「永遠のアメリカン・ヒーロー」とも称されるジョン・ウェイン。作品中のクレジットで「ジョン・ウェイン」より上に「クレア・トレヴァ」の名があるのは、1939年の公開当時、「低予算映画専門役者」と認識されていたウェインより、相手役のトレヴァのほうが「格上」だったから。『駅馬車』は、当時31歳だったジョン・ウェインを、一気にスターダムへとのし上げた出世作なのです。

『駅馬車』が素晴らしいのは、ただバンバン撃ち合うだけの西部劇ではなく、馬車に乗り合わせた人々の人間模様、人生ドラマがしっかりと描かれているという点です。それでいて、後半の戦闘シーンのスピード感溢れる演出、決闘シーンでの緊迫感は秀逸で、今観ても「これぞエンターテイメント!」と思わずうなってしまいます。

ウェインの存在感もさることながら、キャストの中で特に光っているのは「酔いどれ医者」を演じたトーマス・ミッチェル。彼はこの作品でアカデミー賞助演男優賞を獲得しました。ちなみに、同年のアカデミー賞作品賞に輝いたのは『風と共に去りぬ』ですが、トーマス・ミッチェルはこちらにも出演、渋い演技を見せています。

また、誰もが一度は耳にしたことのある名曲揃いの映画音楽も、この作品の魅力のひとつとなっています。

嵐が丘

コメント:弘兼憲史  
嵐が丘

『嵐が丘』は、1847年にイギリスのエミリー・ブロンテが発表した長編小説を映画化した作品です。監督は、『ローマの休日』のようなラブロマンスから、『ベン・ハー』のようなスペクタクル大作まで、あらゆるジャンルで名作を残した巨匠、ウィリアム・ワイラー。原作は『リア王』『白鯨』と並んで「英語文学三大悲劇」にも数えられる名作であるために、この後も数多くのリメイク作品が作られていますが、ウィリアム・ワイラーの『嵐が丘』を超える作品はなかったといっていいでしょう(ちなみに日本でも1998年、吉田喜重監督、松田優作、田中裕子出演の『嵐が丘』が作られています)。

この物語には、出生による身分の違い、肉親によって引き裂かれる純愛、富や名声に目移りする女性、復讐に燃える男性、やがて訪れる悲劇的な結末……といった、古典的恋愛小説の“王道”ともいうべき要素が散りばめられています。映画と小説との大きな違いは、小説の後半部分にある、二世代にわたって泥沼化する復讐劇、亡霊を追い求めて彷徨うヒースクリフの狂気、などが映画では大胆に削除されている点にあります。中には物足りないという人もいるようですが、ワイラー監督は映画としてのエンターテイメント性を十分に考慮したうえで、削除したほうがいいと判断したのでしょう。個人的には、この判断は大成功だったと思っていますが、みなさんはどう感じるでしょうか。

 

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